私は毎日鼻にほじるしてます。^^‼︎ 好きな言葉は"根本治療"

君について、またその夜について

 

情緒的な文章が書けるうちに性的なことも感情的なことも明け透けに残しておこうと思います。1ヶ月もすれば好意も興味も失せて、只々恥ずかしい文であることは間違いありません。全ては私の学びのために。

伝える気はないにせよ伝えたいことでもありますから、敢えて手紙のように認めておきます。断っておきますが、これは恋文ではありません。あの日あったこと、その時分の感情と三日経った今の視点を含めて書くものであり、その多くはきっと文句でしょう。


先ず、あの夜について話すとしましょう。私にとってあの夜は良い夜ではありませんでした。

体感にして三十分以上、私は君と体の関係を持つことを拒否していました。付き合っていないから、心理的な快楽が得られないから、率直な理由を伝えましたし、飲食店にいる間にも付き合っていない人とは関係を持たないと伝えていました。


「嫌だ」と何度も拒否する私を他所に「本当にダメなの?」「俺のこと好きじゃないの?」「キスだけだから」と食い下がる必死な姿に、男性は如何してこうなのだろうと呆れてしまいました。男性と一括りにするのは良くありませんが、その時はそう思いました。性行為をすべくあれこれ言い訳や理由作りをする男性たちのその必死さが嫌いなのです。嫌なものは嫌だというのに自分が行為に及びたいからと幸せな勘違いをして口説いてくる姿が情けなくて嫌いなのです。こんなに嫌そうなのに伝わらないのかと心底呆れます。


君とキスしたくないわけではなかったし、セックスがしたくないわけでもありませんでしたが、それは関係性やタイミングが重要なのであって、少なくともあの日ではなかったのです。君との交際関係を妄想して自分を慰めたことは何度もあります。若し君が私と真剣に向き合う気が合ったのならば、つまり交際していたのならばそれはしたかったのです。反対に交際していない君とはしたくなかったのです。虚しくなることを知っていたからです。


仮にもまだ私の好きな人であった君と同じベッドに転がっている状態で、君に触れるのを我慢できなかったのは否定できません。肌に触れることなく朝を迎えていれば又違ったのでしょうが、人肌の効用は知っていますからそれが少し冷めていたとは言えども好きな人であれば尚のこと快かったのです。君が後ろから抱いてくれた時は安心し、落ち着き、良い気分で舟を漕いでいました。


君の悪魔のような囁きに「キスならしてもいいか」と過りましたが、私はこと性においては理性の人間であります。己に負けてはいけないと思い直しました。私は「キスしたら興奮するでしょう」と反論しましたが君は否定しました。しつこくて面倒であるし、半分寝ている状態で攻防していましたから君の「キスだけ、キスしたら寝る」という表面的な言葉を信じて、それで寝れるならもう良いやと唇を許しました。結局我慢するつもりもない君は襲いかかってきました。

 

少し話を遡ります。そろそろ白黒つけよう、付き合う気がないのなら最後のデートにしようという決意は一週間以上も前からありました。決意と言っても君に好意がある以上、脆いものではありましょうが。

君が遊び人ではないかと出会って間もない頃からわかっていながらもそれを正面から受け止めるのが怖かったのです。恋愛観について殆ど聞かなかったのは、自分のことを聞かれたくない思いが強かったのですが、君のその性質を明らかにしたくなかったことも関係していると今は思います。

私が特別だと思いたかったのです。君が私を好いてくれているというのはわかっていたし、それなりに大切にしてくれていたこともわかっています。共に時間を過ごすことが心地良かったために、何度も会い、多くを語り、恋情のような友情のような定義し難い関係を続けてしまいました。

 

あの日の昼間、カラオケの受付で煙草を吸うと告げた君を睨みつけました。煙草を吸いに行った時、帰ってきた時、物凄く不快になりました。初めてのデートで「私と会う時は吸わない」と言ってくれたのに、以後守ってくれていたからそれを忘れたわけではないだろうに、私の嫌がることをしたことに腹が立ちました。勿論煙草の匂いは元来嫌いで、密室故に濃く匂い不快さを感じましたが、それ以上に私の嫌がることをしたことに非道く苛立ち、君の匂いについて必要以上に強く責めました。

そのような君の日中の態度から何かを察した私は手を繋ぐのもあまり気が乗りませんでした。寒空の下、手袋をはめて、君の手を握り返しませんでした。

そんな時間を経ての夜です。

 

何れにしても君は私と付き合う気がないことを知りましたから会うのは最後であるし、君のことはそれなりに好きだし、もういいかと諦めて腹を括ったつもりでした。しかしそれは過ちでした。君のことは好きでも心理的快楽は殆ど得られませんでした。

生理的快楽で言えばそれなりにありましたし、演技をしたわけではなかったと思います。それでも、気持ち良さよりも居心地の悪さと息苦しさを感じていました。仮にも好きな人とのセックスであるのにこんなに満たされないのかと愕然としました。


キスをして直ぐ、ぐいと舌を捩じ込んできた時、気持ち悪いと思いました。気持ちの良いキスというのは柔らかいのです。互いの唇の柔らかさを堪能した後に舌を優しく絡めると最上です。覚悟して切り替えた気持ちは強引な侵入に依って一瞬で萎んでしまいました。

少し力の強い性急な愛撫にも嫌になりました。耐えられるほどの痛みと嫌悪感がありました。もっと優しく触れてほしいと思いましたが、初めての夜──尤も最初で最後の夜ではありますが──に男性にあれこれ要望をつけるのはプライドを傷つけるのではないかと思い、言えませんでした。今思えば、どうせもう二度と寝ることはないのですから、プライドを傷つけようと淫乱だと思われようと構わず自分の気持ち良さを追求すれば良かったのです。

胸を攻めた後、すぐに陰部に手が伸びたことにも嫌気がさしました。耳が弱いことは伝わっていたのに攻めてもらえない。耳を舐ってくれたならもっと乱れたのに。それどころか、優しく触れられれば全身どこでも感じてしまいます。攻められる場所が唇、胸、陰部しかないなんて興醒めであるし、そのようなセックスしか知らない君をつまらないと思いました。

口淫では早く達してしまう自覚がありますが、あの夜はなかなか逝けませんでした。気持ち良さも足りませんでしたし、何より気が散っていました。「何をしているんだろう」と早くも反省会は始まっていて、君の愛撫の技術にも腹が立っていました。

挿入している時には虚しさに加えて苦しさに襲われていました。君の物は強い圧迫感があり律動と同時に自然と声が漏れました。お腹を殴られているような自然と出てしまう生理的な声でありました。気持ち良くないわけではありませんでしたが、君の律動は微妙でしたから我を忘れるほどではなく冷静な自分が常に在りました。何をやっているんだろう、早く終わってほしい、と思いながらも声は出てしまって、そんな自分を不思議に思っていました。


最中に君が何度か「かわいい」と言ってくれました。その言葉は以前ならば嬉しかったのに何とも思いませんでした。どうでもいい人から貰っている数多の「かわいい」と同じ価値しかありませんでした。「本当に顔がかわいいと思ってる」と改まって言われた時には「あっそ」と口の中で返事をしていました。口から出ずとも顔には出ていた自覚があります。暗かったので見えていなかったでしょうが、例え明るかったとしても同じでしょう。前日までは嬉しかったかもしれないその言葉が本当に心からどうでも良かったのです。


愛撫においても挿入においても、下手くそだと言って頬を叩くほど下手くそではありませんが、確かに君はセックスが下手であると思います。少なくとも上手くありません。心得がないのです。不特定多数と寝る男、所謂ヤリチンは下手くそだと再確認させられました。一夜限りのセックスならせめて上手い男と寝たいものです。心理的快楽は満たされずとも生理的快楽を享受したい。

 

否定ばかりしてしまいましたから良かったことも話しましょう。全てが悪かったわけではないのです。

君の物を納めた瞬間は心が満たされました。

私の口の中で気持ち良さそうに脈打っていたのが喜ばしかった。

挿入している間、沢山キスをしてくれたことが嬉しかった。

事後に服を着せてくれたことが嬉しかった。

 

そして、私の中で達しなかったことが惨めな気持ちになり、許せなかった。

 

率直に、オナニーに付き合わされたと思いました。

 

レイプされたのだとは思っていませんでしたが、ある本を読んでいたら思い当たる節が多々ありレイプだったのだとわかりました。納得、同意をした覚えはないのだから。勿論手酷いレイプだとは思ってはいませんが、確かに私は拒否していたし深く傷ついたのです。

体を重ねなければ君の気が収まらないと思ったし、拒否権なんてあるようでなかったのではないかと思いました。これは今認めていて気が付きましたが、私の深層心理にも多くの女性と同じように、"男性には逆らえない、逆らったらどうなるかわからない"という恐れがあるのです。男性の強い動機である射精を目的として始まってしまった行為を止める勇気がないのです。ただ耐えて終わるのを待った方が安全だと、そう考えていたのです。


あの夜はどのように眠りについたのか覚えがありません。寝苦しくて目を覚ますと君の腕枕で寝ていました。やけに不愉快で腕を雑に掴んで退けたことを覚えています。

浅い眠りを繰り返し何度も起きては時計を見たことも覚えています。

ぐーぐーと寝息を立てている君を置いて帰ろうかと微睡の中で三度は考えました。黙って君の前から消えてしまいたいと思いました。若し君が起きてしまい引き留められたら面倒だと断念しました。


帰り、駅までの道中に君は「普段なら我慢しているけどラーメン食べたい、こんな時は」と言いました。きっと私を手に入れたつもりでさぞ機嫌が良いのだろうと推察しました。故に、すかさず入れた「どんな時だよ」というツッコミは語気が強かったことを覚えています。機嫌の良さそうな君とは対照的に私は自責の念に駆られひどく落ち込み早く一人になりたがっていました。

やり過ごそうと普段通りを演じていたつもりではありますがきっと上手くできていなかったでしょう。隣を歩く君の顔を見られませんでした。

別れ際には何の言葉も出てきませんでした。出そうとすることもしませんでした。誰との別れ際でも三言以上発する私が、です。どうしても君に何か言う気にはなれなかったのです。ただ手を上げて一秒後に背を向けました、これが最後だと思いながら。

昼間の太陽がやけに眩しくて目に刺さりました。強い後悔と反省を持っていました。どんより落ち込むというよりもなんだかエネルギーのある落ち込み方をしていました。自分への怒りがあったのでしょう。君への怒りも少しはあったにせよ二、三割と言ったところで、とにかく自分の行いについて反省していました。かと言って君への気持ちが失せないかと問われればそんな訳もなく、それどころか君と体を重ねる数時間前から気持ちは下降の一方です。


この文を読み、楽しそうにしていたじゃないかときっとそう思うでしょう。楽しい時もあれば嫌な気分になっていた時もあったのです。楽しそうに見えるよう演技をしていたわけでもないのですから、楽しそうに見えていた瞬間はきっと楽しんでいたのです。次の瞬間嫌な気分になったり、かと思えばまた楽しくなったりしていただけのことです。

 

君は私一人に決められるほど私のことが好きではないと知りました。知ってすぐはショックで泣きたくなりました。結局三日経っても涙が流れることはありませんでした。それになんだか君は私のことを好きでいるだろうという根拠のない自信があるのです。打ちのめされてもなお、なぜかそう思うのです。一時的に私への恋心が冷めたとしても、いつか思い出して惜しいことをしたと思うに違いないと確信しています。これは強がりではありません。ただ、自信があるのです。それに、君が私との関係を後悔している頃には私は君のことが好きではありませんから君とどうにかなりたいと願っているわけでもありません。

切り替えの早い私のことですから、一月もすれば君は私にとって、"なぜ好きだったかわからないけど過去に好きだった人"というどうでもいい存在になるでしょう。

君以外にも他に好きな人がいたこと、君よりも良い人がいると思えていたことは不幸中の幸いでしょう。敢えてこう言っておきたいのは私のちっぽけなプライドです。

 

君との出会いで学べたことがたくさんありました。感謝しています。あらゆることを学びに変えていく自分のことを改めて誇らしく思いました。

君と過ごす時間は本当に楽しかったです。嫌だったことを沢山書いてしまいましたが、悪いことばかりではありませんでしたよ。もしそうであったならば何度も会ったりはしませんから。友情のみでも良いと考えていた程です。最初からそうと決めていれば違ったのかもしれませんね。

 

君には送るつもりもないのにこんな文を認めてしまうほどには君のことがまだ好きなのでしょう。